こんばんは、細野カレンです。
アドベント20日目、今夜の物語は、クリスマスケーキとタイムトラベルがテーマです。時空を超える不思議な体験が、主人公にどんな驚きをもたらすのでしょうか?心温まる物語をお楽しみください。
時空を超えるクリスマスケーキ
失われた「つながり」
クリスマスイブの夜、街はきらめくイルミネーションで輝き、人々は買い物袋を手に足早に家路を急いでいました。スマホの通知音が絶え間なく響く中、カオリは商店街の片隅でふと足を止めました。
「また今年も一人か…」
そうつぶやきながら、彼女は自分の手に握られたスマホを見つめました。LINEの画面には、誰かからのメッセージが来る様子もなく、ただ既読のまま放置されたグループチャットが並んでいます。いつからか、友人たちとも会話が減り、家族とも挨拶を交わすだけの日々が続いていました。
気づけば、「つながり」という言葉自体が遠いものになっている。かつてはクリスマスが近づくと、家族や友人と集まり、笑顔で過ごしていたはずなのに――。
カオリは深いため息をつきながら商店街を歩き始めました。どこかの店先から流れるクリスマスソングの音色も、今の彼女には耳障りに感じるだけでした。目の前に広がる煌びやかな光景が、むしろ自分の孤独を強調しているような気がした。
その時、彼女の視線の先に、小さな古びたケーキ屋が現れました。看板には手書きでこう書かれています。
「時空を超えるクリスマスケーキ」
過去のクリスマス – 1997年
目の前には懐かしいリビングの光景が広がっていました。ブラウン管テレビが部屋の中央に置かれ、隣にはVHSビデオのケースが積み上げられています。当時流行していた『たまごっち』を夢中で操作する自分の姿に、カオリは思わず吹き出しそうになりました。
「これが、私の10歳のクリスマス…?」
幼いカオリはプレゼントの包装を豪快に破り、中から現れたピンク色のノートに目を輝かせています。「未来の自分に手紙を書く!」と無邪気に宣言する姿が微笑ましく、大人のカオリはその光景を懐かしさでじっと見つめました。
「何を書くの?」と母が尋ねると、小さなカオリは真剣な顔でこう答えました。
「うーん、『未来のカオリへ、ちゃんと楽しいクリスマスしてる?』かな!」
その言葉に、大人のカオリは思わず笑みを浮かべましたが、同時に胸に小さな痛みを感じました。今の自分は、その問いにどう答えられるだろう――。
未来のクリスマス – 2037年
未来のカオリは、家族や友人たちとホログラムのクリスマスツリーを囲みながら、自分が手作りしたクッキーを配っていました。「これが一番おいしいわよ!」と胸を張る彼女に、周りの大人たちは微笑みながら手を伸ばします。
一方で、子どもたちはクッキーを一口かじり、顔を見合わせながら小声でささやきます。「お母さんのクッキーの方が美味しいね。」それを耳にした未来のカオリは、一瞬ムッとした表情を浮かべるものの、「じゃあ、次はもっと美味しいのを作るわ!」と明るく笑い飛ばしました。
「ちょっと、私ってこんな感じになるの!? たくましすぎない??」
ふと壁を見上げると、そこには写真が飾られていました。そこには現在のカオリが疎遠になっている友人たちも映っていて、皆が満面の笑みを浮かべています。その写真が、未来の幸せな時間と「つながり」を象徴しているようでした。
クリスマス・イブ - 2024年
最後にろうそくを吹き消すと、カオリは現在に戻ってきました。目の前には食べかけのケーキとスマホがあります。彼女はすぐにスマホを手に取り、友人たちにメッセージを送りました。
「今から会えないかな?クリスマスケーキを持っていくよ。」
友人からすぐに返信が来たとき、カオリは久しぶりに心からの笑顔を浮かべました。その夜、友人たちと過ごした時間は、彼女にとって新たな「つながり」の始まりとなったのです。
図案の紹介
この物語にちなんだ、クリスマスケーキをモチーフにした図案をご紹介します。特別な夜を彩るこのデザインで、大切な人との時間を編み上げてみませんか?
時を超える思い出と、今この瞬間の大切さ。この物語があなたのクリスマスに暖かなひとときを届けられますように。